花粉症と合併症
前項では既に花粉症にかかってしまった場合について述べましたが、続いて未だ花粉症に罹患していない子供のための対策を考えましょう。
花粉症にならないための生活とはどういったものか、各項目をチェックしていきます。
理化学研究所の統合生命医科学研究センター特別顧問・谷口克氏(当時の免疫・アレルギー科学総合研究センター所長)が、2009年に発表した「子どもを花粉症にしないための9か条」というものがあります。
小さな子を持つ親御さんからすれば非常に気になるタイトルですが、その内容とは以下のようなものです。
生後早期にBCGを接種させる
幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
小児期にはなるべく抗生物質を使わない
早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
適度に不衛生な環境を維持する
猫、犬を家の中で飼育する
狭い家で、子だくさんの状態で育てる
農家で育てる
手や顔を洗う回数を少なくする
ぱっと見る限り、「へぇー」と頷けるような、「えっ?」と驚いてしまうような意外にも思える項目が並んでいますが、実際のところこれらは効果があるのでしょうか?
「子どもを花粉症にしないための9か条」の最初の項目に「生後早期にBCGを接種させる」とあります。
BCG(カルメット・ゲラン桿菌・Bacille de Calmette et Guérin)とは、結核を予防するワクチン。
結核はいまだにわが国の主要な感染症の一つで、毎年新たに2万人以上の患者が発生しています。
厚生労働省によると生後1歳に至るまでの間に接種することになっており、それ以降に接種すると結核はもちろん喘息やアレルギーの反応を防ぐ働きが薄れるとされます。
とはいえ、BCGに副作用がまったくないわけではなく、そもそもツベルクリン反応陽性者、著しい栄養障害者、広範な皮膚病をもつ患者、高熱のある患者は接種できません。
また、局所リンパ節の腫大が起こるおそれもあるため、生後すぐの接種は却って避けるべきとの声もあります。
「子どもを花粉症にしないための9か条」の2つめは「幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる」というもの。
これは花粉症と乳酸菌の項目でも述べたとおりの理由から。
とはいえ、もとより牛乳アレルギーがある場合は乳酸菌飲食物を与えてはいけません。
3つ目の「小児期にはなるべく抗生物質を使わない」という項目に関しては、やはり体が小さな子供には、強い薬が体の負担となることも考えられるため、使用せずに済むのであればなるべく使わないに越したことはありません。
とはいえ、それにこだわり過ぎるあまり、重大な病気を治すための薬まで投与を拒否するというのは行き過ぎです。
医師に適宜相談の上で、必要なときにはやはり投与し、必要以上に薬に頼ることもしない、という姿勢で臨みましょう。
残りの6項目ですが、
「早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす」、
「適度に不衛生な環境を維持する」、
「猫、犬を家の中で飼育する」、
「狭い家で、子だくさんの状態で育てる」、
「農家で育てる」、
「手や顔を洗う回数を少なくする」。
これらは全て生活環境の問題になります。
要は過度に潔癖にならずに、ある程度の細菌に普段から触れる生活を送ることで、免疫をつけるという意味があります。
無菌室で純粋培養するように育てるのではなく、自然にのびのびと育てることで強い子になるという理屈からくるものです。
とはいえ、これも極端に捉えて、極論に走ってはいけません。
あまりにオーバーな潔癖は困りますが、やはりある程度の清潔さは保つべきですし、そのための手洗いうがいなどの常識的なしつけはきっちり施すべきでしょう。
免疫力を上げようと細菌に触れる機会を増やすべく、人混みの外出先から戻っても手洗いうがいをさせない生活だと、花粉症にはかからなかったとしてもインフルエンザで倒れてしまうかもしれません。
そもそも子だくさんとか農家でとかいうのは、根本的に無理な家庭がほとんどです。
ですので、この6項目については、「極度に潔癖に走らない」くらいの緩い気構えでいいかと思われます。